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京都地方裁判所 昭和55年(ワ)1429号 判決

一 請求原因一ないし三項の事実は当事者間に争いがなく、本件特許発明の構成要件が、請求原因四項(一)記載のとおりであること、同発明の効果が同項(二)の(イ)ないし(ハ)及び(ホ)であることは被告らにおいて認めるところである。但し、成立に争いのない甲第一号証によると、原告ら主張の本件特許発明の効果のうち、請求原因四項(二)の(ニ)記載の効果は、本件特許請求の範囲二項(別紙特許公報記載のとおり)に記載の発明の効果と認められる。

二 被告古川化学工業が、別紙第一、第三、第四、第五各物件目録記載の製品名の抜染剤を生産し、別紙第一、第三、第五各物件目録記載の製品名の抜染剤を被告古川勘に譲渡し、同被告が右抜染剤を第三者に販売してきたこと、被告大力が、別紙第二、第六、第七各物件目録表示の製品名の抜染剤を生産し、これを第三者に販売してきたことは、当事者間に争いがなく、証人鎌田和容の証言とこれにより真正に成立したと認められる甲第三一号証の二、同証言により鎌田和容が昭和五八年一一月一一日撮影した被告大力の製品の写真と認められる検甲第三号証の一一、弁論の全趣旨によると、被告大力は別紙第七物件目録記載の番号一一の製品名の抜染剤(但し、組成はのぞく)を生産販売してきたことが認められ、また、別紙第四物件目録記載の製品名の抜染剤は、被告らの主張によれば、被告古川化学工業が生産したものを被告古川勘が訴外有限会社安達姫糊工業所に納入しているもので、同訴外会社は右抜染剤を被告古川勘から購入して他へ転売しているというのであるから、被告古川勘は右抜染剤を同訴外会社に譲渡してきたものということができ、弁論の全趣旨によれば、被告らの右生産或いは譲渡は、いずれも業としてなされたものであることが認められる。

三 前掲甲第三一号証の二、検甲第三号証の一一、成立に争いのない甲第一三号証の一、四、五、第三四ないし第五三号証、第五八、第六〇、第六三各号証、証人直江達治の証言により成立の真正を認める同第一三号証の二、三、証人鎌田和容の証言により真正に成立したと認められる同第四号証の一、二、第三〇号証、第三一号証の一、第三二、三三号証、同証言及び弁論の全趣旨により成立の真正を認める同第五五ないし第五七号証、第五九、第六一、第六二、第六四、第六五各号証、第七一号証、証人直江達治の証言により花元直三が昭和五五年六月二〇日撮影した被告らの抜染剤の写真と認められる検甲第一号証の一ないし一五(但し、検同号証が被告らの抜染剤の写真であることは当事者間に争いがない。)、証人鎌田和容の証言により鎌田和容が昭和五八年一一月一一日(但し、検甲第二号証の五、一四、同第三号証の一、三については昭和五五年六月)撮影した被告らの抜染剤の写真と認められる検甲第二号証の一ないし四一、同第三号証の一ないし一二(但し、検同号証がいずれも被告らの抜染剤の写真であることは当事者間に争いがない。)、証人鎌田和容の証言、鑑定人山田博の鑑定の結果によると、別紙第一ないし第七物件目録記載の抜染剤は、それぞれ同記載のとおりの組成からなり、同記載のとおりの割合の燐酸第一錫を含有するものであること、別紙第四物件目録記載の抜染剤中に、別紙第一、第三、第五各物件目録記載の抜染剤に相当するものが含まれていないことが認められ、これに反する証拠はない。

そして、弁論の全趣旨(昭和五六年一二月四日の第六回口頭弁論で陳述の被告らの第五準備書面、及び昭和五八年八月三日の第一七回口頭弁論で陳述の被告らの第一九準備書面をもつて、被告らは、被告らの抜染剤がいずれも燐酸ソーダ、燐酸ナトリウムを溶解含有している元糊中に塩化第一錫を添加して調製された抜染糊組成物であることを明らかにしている。によれば、被告らの抜染剤は、元糊中に燐酸塩として燐酸ナトリウム(燐酸ソーダ)を用い、これに塩化第一錫を添加して調製されたものと認めるのが相当である。

被告らは、被告らの抜染剤は、燐酸第一ソーダまたは第二燐酸アンモンを溶解含有している元糊中に、抜染剤成分として塩化第一錫を添加して調整したものである旨主張を変更したが、これを裏付ける資料は何もなく、被告らの前記従前の主張に徴し採用できない。

四 そこで、本件特許発明の技術的範囲について検討する。

(一) 前掲甲第一号証によれば、本件特許発明の願書に添付した明細書は、別紙特許公報記載のとおりであるが、同明細書によると、本件特許発明は、その実体が時間的要素を必須の構成要件としているものはなく、「物」の発明であることが明らかである。そして、物の発明においては、「手段」または「方法的事項」はその構成要件とはなり得ないから、本件特許発明の構成要件としては、燐酸第一錫または酸性燐酸第一錫を、予め調製して元糊中に混入しようと、これが元糊の中で新たに生成されるかは問題とならないものと解され、したがつて、本件特許発明の特許請求の範囲第一項は、まず元糊中に燐酸第一錫または酸性燐酸第一錫が混在している抜染糊組成物を表現したものと認められる。

よつて、この点に関する被告らの主張は採用できない。

(二) そして、右明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明の主要構成分である抜染剤は、燐酸第一錫または酸性燐酸第一錫であり、それらの単独または混合物が用いられる旨の記載がある反面、塩化第一錫など他の抜染剤が混在しないという記載はない(別紙特許公報)。

また、右明細書の発明の詳細な説明には、本件特許発明が、抜染布を脆化することなくしてすぐれた抜染効果を発揮し、かつ抜染工程において有害ガスを発生しない抜染糊を提供することを目的としてなされたものであり、「従来抜染剤として塩化第一錫を用いた抜染剤による抜染は、抜染布の抜染部分を脆化すること、抜染布の抜染部分周辺に暈輪現象(ハレーシヨン)を生ずること、抜染工程において強酸性の塩化水素ガスを発生して作業者の呼吸器官及びひふに刺戟を与えること等の問題を有していたので、かかる問題を解決すべく種々の第一錫塩について抜染剤としての適性を多角的に検討した結果、燐酸第一錫及び酸性燐酸第一錫が抜染剤として最もすぐれた適性を有することを見出した」との記載がある(別紙特許公報)。

これらに徴すると、右明細書の特許請求の範囲第一項の記載は、従来抜染剤として塩化第一錫を用いた抜染糊の有していた前記問題を解決するに十分な燐酸第一錫または酸性燐酸第一錫が混在している抜染糊組成物、換言すれば、燐酸第一錫または酸性燐酸第一錫を主要な抜染剤としている抜染糊組成物を表現したものと解するのが相当である。

五 そこで、被告らの抜染剤が本件特許発明の技術的範囲に属するかを判断する。

(一) 成立に争いのない甲第七〇号証、弁論の全趣旨により成立の真正を認める同第六六号証、証人鎌田和容の証言によれば、燐酸塩と塩化第一錫を混合することにより燐酸第一錫が定量的に生成すること、燐酸塩と塩化第一錫を抜染剤中で混合したとき、その抜染剤に含まれる燐酸第一錫態の錫の量が抜染剤中の全錫量の二五パーセント以上あれば、燐酸第一錫態以外の錫の残存にかかわらず本件特許発明の前記作用効果が得られること、そして、被告らの別紙第一ないし第六物件目録記載の抜染剤(但し別紙第五物件目録記載の番号三四の抜染剤はのぞく。燐酸第一錫の含有量(パーセント)から第一燐酸錫態以外の錫の残存率を計算すると(その計算方法は、抜染剤中に含まれている全錫量から第一燐酸錫態になつた錫の量を差引いた残錫量を右全錫量で除し一〇〇倍する)、別紙第四表記載の錫残存率欄記載のとおりであることが認められる。

そうすると、別紙第一ないし第六物件目録記載(但し、別紙第五物件目録のうち番号三四をのぞく)の抜染剤は、いずれも、燐酸第一錫態以外の錫の残存率が抜染剤全体の錫の七五パーセントを下まわり、したがつて、燐酸第一錫態の錫の量が、二五パーセント以上であるから、右抜染剤は、いずれもその含有する燐酸第一錫の量が本件特許発明の前記効果を有するもの、換言すれば、右抜染剤は、いずれも燐酸第一錫を主要な抜染剤としていることが認められる。

(二) 被告らは、燐酸第一錫と塩化第一錫が混在する場合に、燐酸第一錫が抜染剤として主剤であるといい得る量は塩化第一錫の少くとも八重量倍以上の場合であると主張し、検乙第二ないし第四号証には、これに副う実験結果が記載されているが、証人鎌田和容の証言によれば、燐酸第一錫は水難溶性であるからその物理形状によつて抜染効果が影響され、粒子の大きいものを使えばその抜染力が働かないことが認められるところ、右各号証の実験に用いた燐酸第一錫の物理形状は不明であるし、検乙第三、第四号証については、実験に用いられた各抜染糊中の全錫量が一定でないことが明らかであるから、右各号証をもつて被告らの右主張を証するものとはいえない。また、検乙第四、第五号証には、抜染糊組成物中に含まれる錫及び燐の量がほぼ等量の場合に燐酸第一錫を使用する場合が第一燐酸ソーダを使用する場合に比し抜染効果が劣つていることが表示されているが、右各号証の実験で使用された燐酸第一錫の物理形状が不明なこと及び前掲甲第六六号証に対比すると、右表示をもつて直ちに、燐酸第一錫と第一燐酸ソーダとが抜染糊組成物中で異質の系を構成しているともいえないし、第一燐酸ソーダに反応しないでそのまま残存している塩化第一錫の量がかなり多いためであると推定することもできない。

(三) 他に右(一)の認定を覆えすに足りる証拠はない。

(四) 特許発明の技術的範囲は、明細書の特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないところ、右(一)で認定したところによれば、別紙第一ないし第六物件目録記載(但し別紙第五物件目録記載の番号三四はのぞく。の被告らの抜染剤は、燐酸第一錫が主要な抜染剤であるといえるから、被告らの右抜染剤は、前記四項の判示によれば、原告の本件特許発明の技術的範囲に属するものというべきである。

別紙第五物件目録の番号三四及び別紙第七物件目録の各抜染剤については、前記のとおり燐酸第一錫を含有していることは認められるものの、該抜染剤中における燐酸第一錫態以外の錫の残存率が七五パーセントをこえないものであることを証するに足りる資料はないので、右抜染剤については、右特許発明の技術的範囲に属するものと断定することはできない。

六 被告らは、捺染用元糊に燐酸塩を含有せしめることは本件特許発明の出願前公知であり、被告らの抜染剤は右公知技術をそのまま実施したにすぎない旨主張するので、以下検討する。

(一) 被告らの抜染剤が燐酸塩を含有する元糊に塩化第一錫を添加して調製されたものであることは前示のとおりである。そして、前掲甲第一号証によると、抜染剤として塩化第一錫を使用することが本件特許発明の出願前公知であつたことは認められる。(二) しかし、本件全証拠によつても、捺染用抜染剤に燐酸塩を含有せしめることが本件特許発明の出願前に公知であつたとの被告らの主張を認めることはできない。すなわち、

(1) 乙第一号証には、一般にローカストビーン系糊料には金属封鎖剤、例えば燐酸化合物の如きものが添加されていると記載されているが、成立に争いのない甲第二五号証の一、二、第二六号証によると、右記載は酸性/含金染料に対する捺染糊料の安定性試験に関する記載の一部で、抜染糊に関する記載でなく、しかも、右燐酸化合物が塩化第一錫と反応し本件特許発明におけるような燐酸第一錫を生成するものであることが明らかであるとはいえない。

(2) 乙第二号証には、ポリエステル繊維の抜染の際の糊剤の選定に関し、糊剤としては耐還元性のもの、例えばクリスタルガム系統(ナフカクリスタルガム、ラメクリスタルガムなど)や、ローカストビーンガム系統(インダルガム、メイプロガム、キプロガムなど)の中から選択して使用するとの記載があり、更に、着色抜染法に関し、その処方例として糊剤五〇〇グラムに対し塩化第一錫八〇ないし一二〇グラムを加えたもの等が記載されているが、同号証からは、燐酸第一錫の混在している抜染糊が明らかでないし、前記乙第一号証記載のローカストビーン系糊料が乙第二号証記載の抜染法で使用されるものであると断定できないばかりか、ローカストビーン系糊料に含まれるものが如何なるものかも明確でない。

(3) 乙第三、第二三各号証には、メイプロガムNPタイプ(糊)に燐酸塩を配合する旨記載されているが、これらは刊行物でない。

(4) 乙第二〇、二一号証には、メイプロガムNPタイプは、ローカストビーンガム及びグアガムをベースとしており、抜染にも使用され、塩化第一錫と共用できる旨の記載があり、乙第一五号証には、メイプロガムNPが塩化第一錫と共用でき、使用例のアセテートの着色抜染の項にはメイプロガムと塩化第一錫の併用が示されており、また、メイプロガムは抜染剤と適応性があることが記載されている。しかし、右各号証には、メイプロガムNPタイプを抜染剤と併用する理由に、含金属染料、塩化第一錫の如き還元剤に対する安定性を有することが掲げられていることに照らすと、右各号証にいうメイプロガムNPタイプの併用は、いずれも前掲乙第一号証と同様金属イオン封鎖剤として添加されている可能性が高いと認められるのであり、乙第一号証について判示したのと同じく右各号証により、メイプロガムNPタイプが塩化第一錫と反応して燐酸第一錫を生成するものであることを明らかにしているとはいえないし、メイプロガムNPタイプがかなりの量の燐酸塩または燐酸イオンを含むことを明らかにしているものともいえない。

(5) 乙第四号証は、捺染用糊料と塩化第一錫、デクロリン等の抜染剤との試験結果の一部が表示されているだけである。

(6) 乙第六号証は刊行物ではない。

(7) 乙第七号証(税関分類例規集)には、「ローカストビーンフラウアーに粘質性を安定させるため燐酸ナトリウム(重量割合で一五パーセント)が添加混和された物品」が記載されているが、右物品が捺染糊として使用されるものであるか不明であるばかりか、同物品が実際に何時輸入されたか不明である。

(8) 乙第八号証には、アントラゾン染料の着色抜染には第一塩化錫及びヨリネンを添加する旨の記載があるが、前掲甲第二六号証、成立に争いのない同第二七号証によると、ヨリネン、すなわちヘキサメタ燐酸ナトリウムは金属イオン封鎖剤として知られる縮合燐酸塩の一種であり、前記乙第一号証について述べたと同じ理由により、これをもつてはヨリネンが塩化第一錫と反応して燐酸第一錫が生成することが明らかであるとはいえない。

(9) 右(1)ないし(8)でみてきたところによると、右乙各号証をもつては、抜染用元糊に燐酸塩を含有せしめることが、本件特許発明の出願前に公知であつたとの被告らの主張は認められず、他に右主張を証するに足りる証拠はない。

(三) そうすると、右主張を前提とし、被告らの抜染剤が公知技術をそのまま実施したにすぎない旨の被告らの前記主張は採用することができない。

七 右みてきたところによれば、いずれも業として、被告古川化学工業は別紙第一、第三、第四、第五各物件目録記載(但し、同第五物件目録の番号三四はのぞく。以下、同じ。の抜染剤を生産し、別紙第一、第三、第五各物件目録記載の抜染剤を譲渡し、被告古川勘は別紙第一、第三、第四、第五各物件目録記載の抜染剤を譲渡し、被告大力は別紙第二、第六各物件目録記載の抜染剤を生産し譲渡することにより、原告の本件特許権を侵害しているものというべきであるから、特許法一〇〇条により、被告古川化学工業に対し、別紙第一、第三、第四、第五各物件目録記載の抜染剤の生産、譲渡の、被告古川勘に対し右抜染剤の譲渡の、被告大力に対し、別紙第二、第六各物件目録記載の抜染剤の生産譲渡の各停止を求め、かつ被告らに対し右各生産、譲渡している抜染剤の廃棄を求めることができるというべきである。

八 被告古川化学工業、同古川勘は、別紙第一物件目録記載の抜染剤のうち番号二、三、六、八ないし一一、一五の抜染剤はすでに生産、譲渡を廃止している旨、被告大力は、別紙第二物件目録記載の抜染剤全てにつき生産、譲渡を廃止している旨各主張しているが、これを認めるに足りる証拠はない。

九 被告らは、特許法一〇三条により、前記の本件特許権侵害行為について過失があつたものと推定される。

一〇 そこで、被告らの右特許権侵害行為による原告の損害について検討する。

原告は、特許法一〇五条に基づき、別紙第一ないし第六物件目録記載の抜染剤を被告らがそれぞれ別紙第五表、第六表の数量、単価各欄記載のとおりに生産、譲渡していたとの主張を立証するため被告らの生産、譲渡にかかる期間に対応する期間の売上商品及びその金額を示したものとして、被告らの売上帳または売掛帳の提出命令を、また、被告らの右譲渡による利益率が右各計算表の利益率欄記載の利益率であるとの主張を立証するため、右期間に対応する会計年度の期末の資産及び負債の残高を示すものとして右期間中の貸借対照表を、各会計年度の期間中の損失及び利益の額を示したものとして、右期間中の損益計算書の提出命令を求め、当裁判所は昭和六〇年五月一〇日付決定で右提出を命じたが、被告らは右提出命令に従わない。

そこで、当裁判所は、民訴法三一六条により、右提出命令にかかる被告らの売上帳、売掛帳には、右原告主張の生産、譲渡数量、同譲渡単価の記載があり、また、被告らの貸借対照表、損益計算書には、原告主張の利益率が記載されていると認めることとする。

右認めた事実によれば、被告古川勘は別紙第一、第三、第四、第五各物件目録(前記のように別紙第五物件目録の番号三四はのぞく。)記載の抜染剤につき、別紙第五表の数量、単価各欄記載のとおりの数量を同単価で譲渡し、同表の利益率欄記載の利益率の利益を得たものと推認でき、また、被告大力は、別紙第二、第六各物件目録記載の抜染剤につき、別紙第六表の数量を同単価で譲渡し、同利益率欄記載の利益率の利益をあげていることが推認される(被告らが、別紙第五表、第六表の「被告の認めた数量」欄記載のとおりに被告らの抜染剤を生産、譲渡し、或いは譲渡したことは当事者間に争いがない。)。

そうすると、原告は、被告古川化学工業及び同古川勘の前記の本件特許権侵害行為により、別紙第五表の損害額欄記載の金額のうち、別紙第一、第三、第四各物件目録記載の抜染剤関係の金額合計四一三四万五八二八円の損害を蒙り、被告大力の本件特許権侵害行為により、別紙第六表の損害額欄記載の金額のうち、別紙第二、第六各物件目録記載の抜染剤関係の金額合計三七四一万五四五九円の損害を蒙つたものと推定される。

原告は、別紙第五物件目録記載の抜染剤関係の損害も主張するが、そのうち番号三四の抜染剤については特許権侵害の主張が認められないことは前示のとおりであり、第五物件目録記載のその余の抜染剤関係の損害については、右番号三四の抜染剤の生産、譲渡された数量がどれだけか証拠上不明であり、したがつてまた、その余の抜染剤の生産、譲渡数量も特定できないから、その余の別紙第五物件目録記載の抜染剤に関する損害は特定できないといわざるを得ない。したがつて、右主張は採用できない。

そうすると、被告古川化学工業及び被告古川勘は、原告に対して各自、右損害金四一三四万五八二八円及び内金二二六〇万一四一〇円(別紙第一、第三各物件目録の抜染剤に関する昭和五七年一〇月末までの生産、譲渡分及び別紙第四物件目録の抜染剤関係分のうち原告が昭和五七年一一月一日からの遅延損害金を求める損害金分)に対する侵害行為後である昭和五七年一一月一日から、残金一八七四万四四一八円に対する同じく侵害行為後である昭和五八年一一月一日から、それぞれ支払済みまで民事法定利率年五パーセントの割合による遅延損害金を、被告大力は原告に対して、右損害金三七四一万五四五九円及び内金二一四〇万〇〇一二円(別紙第二物件目録の抜染剤の昭和五六年六月末までの生産、譲渡関係分のうち、原告が昭和五六年七月一日からの遅延損害金を求める損害金分)に対する侵害行為後である昭和五六年七月一日から、残金一六〇一万五四四七円に対する侵害行為後である昭和五八年一二月一日から、それぞれ支払済みまで右同割合による遅延損害金の支払をなすべき義務があるといわなければならない。

一一 以上によれば、原告の被告らに対する本件各請求は、右認定した限度で理由があるから認容すべく、その余は失当であるから棄却することとする。

〔編註〕 本件における特許権は左のとおりである。

(イ) 出願日   昭和四八年七月三日

(ロ) 出願公告日 昭和五一年二月二六日

(ハ) 発明の名称 抜染糊組成物

(ニ) 登録日   昭和五一年一〇月一二日

(ホ) 登録番号  第八三一三四〇号

本件特許発明の願書に添付した明細書に特許請求の範囲第一項として記載されたところは、「元糊中に、燐酸第一錫または酸性燐酸第一錫を混入してなる、抜染糊組成物。」である。

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